『灯台もと暮らし 』西伊豆ガラス工房FARO徒然日記

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そうそう!
修理といえば、昨年も1件あったのでした。

預かった大切なトロフィーを壊してしまって大変困っているのだが、
直せるかどうか?というご依頼。

メールの画像でははっきり分からなかったので、あいまいな返事しか
できなかったのですが、やはりとっても大事なもので、
どうしても見てほしいから、今すぐ伺います!
と、東京から車を飛ばしてお越しになりました。




世界的に権威あるサッカーの表彰を、日本の少年が受けた時にもらった
トロフィーだそうで、預かっているうちにこちらの会社の方がうまく
梱包していなかったらしく、開けたら首が折れていたそうです。

世界で1人しかもらえないトロフィーなのに壊してしまって、その子にも
お詫びのしようがなくて、どこか直してくれるところはないかと、
探しまくってやっとFAROを見つけたそうです。

本当に大変お困りの様子。

けれど、私どもではサッカーボールを吹くことはできないので、
折れてしまった部分を接着するしか手がありませんでした。

それでもいいから、何とか直して欲しいとおっしゃって、
けれどすぐに返さなくてはならないから!と、お急ぎでした。

細かな破片は致し方ないですが、残った破片をパズルのように
うまく合わせ、ガラス用の接着剤で慎重に張り合わせました。




幸い、亀裂は下半分でしたので、正面や上部から眺めるのなら
十分耐える仕上がりまで回復できました。




ご連絡したら、夜の8時ごろ大急ぎでまた東京から引き取りに見えました。

修復箇所は、お客様が驚くほどの仕上がりだったようで、

『本当に助かりました!』

と、大喜びでお帰りになりました。



今日は、7年ぶりにお客様がお見えになりました。
位牌の相談に見えたのが初めでした。

NEC_3297


今年のお正月に、ファックスが届きました。
クリスマスイブに、とうとう天国へ旅立ったと書かれていました。

長かったなあ、、、
頑張ったんだなぁと、文面を読みながら7年前を思い出しました。

お嬢さんは9歳のある日、よくある熱を出した3日後に植物状態に
なってしまい、以来ずっと機械に繋がれたまま、
今は12歳だとあの日おっしゃっていました。

いつか、お別れの日が来るだろうから、今からいろいろ準備をしていて、
その時にはお位牌は私に相談したいとおっしゃっていました。

あれから7年。
12歳だったお嬢さんは、今月末で19歳を迎えるところでした。

元気だった9年と、意志疎通ができなくなってからの9年、、、

最後の9年間、ご本人もご家族も本当に頑張ってきただろうな、
そしてもう頑張らなくていいんだなという気持ちでした。

『いきなりじゃ可哀想だから、ゆっくりさよならを言ってくれて
いるんだと思えるんです。(^-^)』

7年前にママが私に言った言葉が、印象的でした。

あの時、依頼されたデザインは、羽根のついたかわいらしいものでしたが、
今回新たに提案されたデザインは、全く違うものでした。
きっと、お嬢さんが大人になって、かわいらしいというのとは
違ってきたからでしょう。

ピンク色が好きだったそうです。
だから、ピンクの月。
そして、ピンクの波をイメージしたものでした。

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色合いのご相談や、月が歪むかもしれないという問題などを
話し合って、製作しました。

そのお位牌が出来たとご連絡したら、当初希望されていた

『遺灰を入れたペンダント』

を、やはり作りたい、可能ならば自分で作りたい。

とおっしゃいました。

今日はお位牌を引き取りに来ていただいたのと同時に、
そのペンダントを製作する日でした。

大切に持っていらっしゃった遺灰。
それをどうやってガラスに封じ込めるか、またデザインは
どんなふうにするかと、しばらく話し合って、バーナーを
使って頂きながら、ぶっつけ本番で制作していただきました。

私もお手伝いしましたが、かなりの部分を、お母様が
携わる作品になりました。

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ご覧になっていたお父様が、自分も小さいものを作りたいと
おっしゃって、今度は小さな角のような貝のようなガラスを
作りました。

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やはりこちらにも、遺灰を入れました。

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ペンダントには、黒い革ひもを選ばれて、そのまま身につけて
お帰りになりました。

以前、お坊さんに

『仏教でもキリスト教でも、塵になって大地に還るのが成仏。
ガラスに遺灰を入れこんでしまうなんてもってのほか!』

と言われ、今回のお母様にも何度もお話しましたが、
やはり遺灰をいつも身につけていたいとの強い希望がありました。

愛する人を悼む形は、人それぞれ、自由でいいのだと思いました。

そうそう。
表札と言えば、昨年も製作したのでした。

息子の保育園のお友達のママからのご依頼。

お知り合いの方のお祝事には、いつも私の
夕陽グラス宵のグラスを贈ってくださいました。

数年前に、ご主人の就職で神奈川県へ引っ越してしまい、
昨年茅ケ崎に一戸建てを建てたそうで、オリジナルの
表札を、ぜひ夕陽グラスのカラーで作って欲しい
という
ご注文でした。


この夕陽グラスのカラーリングが、お皿にすると、赤い部分が
少なくなる傾向があり、ましてや表札ですから、お皿自体の
厚みも倍以上にしなくてはならず、とにかく色の幅が狭くなる
要素たっぷりで、何度もやり直し、3枚製作しました。

いよいよ私が悲鳴をあげて、外周に紫を入れて色の幅を
太くする案を提示して了承していただき、4枚目を吹いて、
やっとこさっとこ完成~~

で、文字をどうするか???

サンドブラストで彫刻しても、文字は白いので、あまり目立ちません。
ガラス棒で描いてく、、、という案も出ましたが、お皿にしてからは
ガラス棒で描いている間に割れてしまいます。

私がフリーハンドで描いたとしても、その文字を彼女たちが
気に入るかどうかも心配でした。

何度もやりとりして、文字は本人にペイントしてもらうという
方法をとりました。

絵具とお皿を、茅ケ崎に送り、乾かしてから送り返してもらって、
電気炉で温度を加えました。




エナメル絵付けではないので、いつかはげたり、色が褪せたり
するかもしれないことは了承していただきました。

もしもそうなったら、また書きなおそうということに。




送り返された表札には、思いがけず彼女の故郷の
大田子海岸から見える夕陽が
描かれていました。

さすが、郷土愛の強い彼女です。
とっても上手!!!

春先は、この『ゴジラ岩』の目のあたりに、夕陽が落ちていくんですよ!


世界でたったひとつのオリジナル表札
彼女たちの生活を彩ってくれていると思います。

ワンちゃんの手形を作って欲しいと、静岡から、
フェリーに乗ってご家族がお見えになりました。



一目で高齢のワンちゃんだとわかりました。
瞳が真っ白だったのです。




目が見えないので、とっても震えていました。
怖がっているので、数秒で粘土に手形を採りました。

パパが抱いていたので、ママとお嬢さんがスマホで手形を
採っているところを写真に納めていました。


クリアのガラスの写真たてに接着するので、その盾に裏側から
なぞれば、手書きのメッセージなどをそのまま私がなぞって
彫ることができますよ!

とご提案したら、皆さん喜んで、お嬢さんが代表で
ワンちゃんの名前や生年月日、今日の日付と

『家族の末っ子!』

『あいらびゅー』


など、いろいろ書いていらっしゃいました。

皆さんの様子を拝見すれば、とにかく愛情たっぷりに育った
ワンちゃんだとわかります。




小さな手形が採れました。

この後、石膏を流して型を取り、西伊豆の珪石を砕いた砂に
スタンプして、1400度近いガラスを流し込み、ガラスにします。

ワンちゃんがいつか天国へ渡っても、肉球のプニっとした
様子がいつでも思いだせる手形になることでしょう。

お電話で、

『割れてしまったランプシェードを
作りなおしてもらうことは可能ですか』


とお問い合わせがありました。

お店で使っているランプで、長さ45センチ、直径12センチの
筒状の火屋を割ってしまったのだそう。

FAROの焼き戻しの窯の奥行きは45センチもないので、
無理ですとお断りしたのですが、やっぱり何とかならないかと、
再度お問い合わせが、、、

製造元に聞いてみたら?と聞くと、

『オープン時、何個かのランプシェードと、ランプの器具をセットで
内装業者に設置してもらったので、そこへ問い合わせしたら、
一つだけ作るには50000円かかると言われた』

とおっしゃるので、実物を拝見していないけど、吹きガラスで
そんなに大きな火屋をオーダーメイドで頼んだら、それくらい
するかもしれませんね、、、とお返事しました。

『ぜひ1度見てもらって、たとえば割れたところだけ切り取って
もらうとかできませんか?』

と、本当に困った様子だったので、FAROまでお持ちいただきました。




拝見したら、私が思っていた吹きガラスのものではなく、理化学系の
薄いパイプの両端を焼きなまして、穴を開けたように見えました。

これで5万円か、、、う~ん、

『実は、自動車修理関係の友達に、ウォーターカッターで
一度切ってもらったんです。
そしたら、余計ヒビが入ってしまって、、、』

筒状に切断するには、ちょっとコツがいるんです。
一気に切断しようとすると、必ず割れます。

気をつけてトライしてみますが、このヒビが走ってもっと割れる
可能性もあるので、それでも構わなければ承ります。

と、お答えしたら、了承してくださいました。




ガラスはちょっとづつ、1周をゆっくり進めながら、薄皮を
切るようにして段々深く切り取っていくのです。

最後の薄皮1枚を切る瞬間が、一番割れやすく、緊張するところですが、
主人がやっておいてくれました。




更に、油やヤニで茶色くなっていたガラスをきれいにしてくれました。

うまく切れましたよ!
とご連絡したら、車で1時間以上かけてすぐに飛んでこられました。

嬉しそうに帰って行かれて、私も嬉しく思いました。

アルバイトから帰った主人に、幾らもらったの?と聞かれたので
話したら

「え???
理化学ガラスで、硬くってかなり苦労したのに、
そんな安くしちゃったの???」


って呆れられました、、、


やっぱり、私って商売下手なのね~~~

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