今回、うずグラス仕様を変更しました。

うずシリーズは、私が能登島で働き始めた頃から
制作していますので、かれこれ20年近くなります。

今まで作っていたうずグラスと、何が違うのか?
口元の開き具合と、厚みです。


吹きガラスを習い始めた人は、大概薄く吹けません。
薄く、均一に吹くには、訓練が必要なのです。

毎日毎日、ガラスに触れて、ガラスの次の動きや、
温度を判断し、的確なタイミングで吹いたり、成形
できる経験値が必要です。


だから、習いたての頃は誰もが

「もっと薄いガラスを吹けるようになりたい!」

と、必死に努力します。


私も同じように「もっと薄く!」と、がんばりました。
1年も仕事をすれば、吹けるようになりました。

更に薄く!と、どんどん薄くなって行きました。

薄く吹ければ、格好いいとさえ
思っていたと思います。
だけど、、、


自分の生活の中で使うと、薄い器は割れる割れる、、、

それから、取っ手の付いたマグやジョッキも、
取っ手からすぐにヒビが入ります。

羽根や、耳が付いた器も、、、


そうなんです。

薄すぎる器や、必要のない飾りがついたものは、
毎日の生活には適合しにくい
のです。

だけど自分の中に、やはり薄く軽く、人が作らないような
変わったものを作らないと、、、というこだわりがあったのだと、
ガラスに携わって22年経った、今の私にはわかります。


FAROのポリシーは、


『どこにもないデザインで、ちゃんと使えるものを作る』

です。


だけど、改めて考えるに、私が作ればただのコップでも、

”どこにもない、私のコップ”

なんですよね?


口元も、使う側に立って程よい厚みにして、
開きすぎていた口径も狭めました。

試しに、自宅で使っていますが、ずっと割れないで、
毎日の食卓に上っています。


一番びっくりしたのは、

「お前のグラスは広がりすぎて
飲み干すときに、口の端から飲み物がこぼれる!」


と絶対使ってくれなかった主人が、
晩酌に使ってくれたこと!!




もうひとつ、今まで淡いキャンディーカラーで展開して
いた色に、コバルト色を加えたこと。


当初うずグラスは、このコバルト色だけでした。

時はバブルの終焉を迎えたころ。
まだまだ景気は良い方でした。

このコバルト色のうずシリーズはよく売れたのです。

もともと、コバルト色が工房で常時使えて、便利
だったので使ったのですが、この色は日本人が
一番ガラスの中で好むのだ
と、理解しました。


だから、独立した時に封印したのです。

そんな小細工を使わないで、
自分の腕だけで
真っ向勝負してやる!
って、、、


若かったな~って思います。(笑)

だって、売れたということは、必要とする方が
いらっしゃった
ということ。

なのに、自分のこだわりの為に、欲しがっている
方へ欲しいものを作らなかった。


私は芸術家でも、ガラス作家でもなくて、
ただのガラス屋なんです。

だからグラスではなくて、”コップ”でいいんです。

使う人にとっては、そんなことどうでもいいことです。

毎日の生活がちょっとウキウキして、
使い勝手の良いガラスがあれば、、、



虚栄心や執着心や思いこみに惑わされず、
素直に飾らないありのままの自分の分身として
ガラスを作って行きたいと、今とても思っています。